G&U技術広報誌vol.15

2026 vol.15 G&U 2 巻頭言 失われた信頼、マイナスからのスタート 八潮の事故によって、下水道インフラに対 する社会的信頼は大きく損なわれました。何 事もなくて当たり前だと思われていたものが、 「実は危ないのではないか」という認識に変 わってしまった。報道を見ても、学生と話し ていても、そう感じます。 事故を踏まえ、老朽化対策に予算を投じた り、新技術の開発・実装を進めたりという動 きはあります。しかし、それだけでは不十分 で、「失われた信頼をどう回復するか」とい う視点が必要と私は思っています。これから プラスの方向に進むとしても、マイナスから のスタートだと捉えておくべきでしょう。 逆に言えば、あらためて光を当てるのは今 をおいてありません。では、安全・安心を確 保するため、老朽化対策をどう進めていくか。 現状は「ヒト・モノ・カネ」の全てが不足し ている状況です。人口が減り自治体の収入は 減少する一方で、老朽化施設は増え続けます。 投資対象が増加する一方で、予算も働く人も 減っていく。我々は非常に難しい局面への対 応を突きつけられています。 国の予算が多少増えようとも、老朽化した 施設は今後も右肩上がりで増え続けるでしょ う。維持管理にどうリソースを配分し、いか にコストを抑え、人手をかけずに行っていく か。真剣に考えなければならない時期が来て います。 メンテナビリティ確保へのメリハリ 八潮の事故の後に「メンテナビリティ」と いう言葉が出てきました。本当はもっと早く、 新設の時代から考慮するべきことだったんだ ろうと思います。遅きに失したと自責の念も ありつつ、多くの施設が改築更新を控える今、 現場で働く方々へのリスペクトをもってそれ を考えなくてはいけません。安全の確保とい う意味で、メンテナビリティは、絶対的に必 要なことだと考えています。 よって、今後の改築はこれまでと同じもの に入れ替えるだけではだめで、メンテナビリ ティを確保するための投資が必要になります。 これまでよりもコストがかかる以上、国が しっかり財政支援しなければ取り組みが進ま 東京大学大学院 工学系研究科都市工学専攻 特任准教授 加藤裕之 八潮市の道路陥没事故から考える 下水道の未来

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