G&U技術広報誌vol.15

2026 vol.15 G&U 3 八潮市の道路陥没事故から考える下水道の未来 ないでしょう。 しかし国の状況を見ると、財政全体として の収入は限られ、社会保障費は上がり続けて いる。公共事業にあてられる予算には限界が あります。どのインフラも「予算が必要」と 言うわけで、結局は枠の中での取り合いです。 都市開発などにはもっと民間資金を活用し、 基礎インフラに国費をあてるべきとは思いま すが、「必要だからください」「事故が起きて 大変なんです」と言うだけでは十分ではあり ません。どれくらい効率的にやろうとしてい るか、工夫と努力を見せなければならない。 これが「メリハリ」で、そのうえで「これだ けやっても足りないんです」というロジック を組み立てる必要があるでしょう。 地下インフラへの投資と市民理解 一方、自治体がこれまで以上の財源を確保 するには使用料の値上げが必要で、そのため には下水道のイメージを変えていく必要があ ります。市民から「負担してもいい」と言っ てもらえるような状況を作っていかなければ なりません。 全国の首長を見ていると、地上のまちづく りを一生懸命やるのに対して、地下のインフ ラにはあまり注目しない方が多いのではない でしょうか。本来、首長は下水道管理者です。 あらゆる活動の土台となる水インフラにもっ と目を向けてもらうため、下水道の現状や効 果を見える化していく必要があります。 水道は断水があると大騒ぎになりますし、 あふれ出す漏水も視覚的に目立ちます。とこ ろが下水道は、めったなことでは使用不能に はならないので、問題の存在が伝わりにくい。 加えて、水道は利用者が直接的に便益を受け ますが、下水道は別のところに効果が及ぶと いう特性があります。恩恵を受けるのは川の 下流だったり海だったりで、利用者自身には 効果が感じられないのです。 その意味で、下水道は公的な側面がより強 いとも言えます。だからこそ、このような構 造を理解してもらったうえで、公費をしっか りと使わせてもらいたい、と主張し続けるべ きだと思います。 ヒト不足解消へ、マンホール蓋も武器に モノとカネの話をしてきましたが、最も深 刻なのはヒトの問題です。そもそも人が入っ てこなくなっている。これは上下水道業界自 体が認知されていないからで、知られていな ければ選ばれようがありません。 ただ、経験則から言えば「業界として安定 している」という点は響きます。そのうえで、 事故を契機に新しいテクノロジーが広がりつ つあり、DXも進んでいくと説明すれば、興 味を持つ学生は必ずいます。 問題は、各関係者が思い思いにPRを行っ ていることです。アピールするポイントを絞 り、業界全体の共通認識とするべきでしょう。 安定した業界であり、個人としても成長でき る。ましてや「今あるストックをどうつくり 変えていくか」という面白い時代にやっと 入ったのです。危機が確実に迫っているから こそ、頑張った分だけ成果や問題解決を実感 できるはずです。 そこを業界一丸で伝えていくときに、大き な期待がかかるのがマンホール蓋です。誰も が目にするほぼ唯一の下水道施設として、重 要なシンボルになり得る存在だと考えていま す。 P R O F I L E 【かとう・ひろゆき】 早稲田大学大学院修了後、1986年建設省下水道 部に入省。滋賀県下水道課長、日本下水道事業団 計画課長、国土交通省下水道部下水道事業課町村 下水道対策官、同下水道事業調整官、同流域管理官、 同下水道事業課長などを歴任。日本下水道新技術 機構・新技術研究所長、日本コン・技術統括フェロー を経て、2020 年 4 月より現職。1960 年生まれ、 横浜市出身。

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